PAGE TOP

控訴審準備書面(3)

控訴の問題定義を下記の2点に整理した。

高等裁判所が原判決を支持するならば、控訴人が定義する問題定義に対する法的見解を控訴判決に盛り込むことを請求する。

また、控訴人にはそれを請求する権利があると考えているが、高等裁判所がそれに応える義務はないとするならば、その説明を求めたい。

1 死亡保険金を保険金受取人の固有財産とする判決は違法判決である

① 保険会社が行う財産上の給付の対象は母である

保険法2条の1では、「当事者の一方が一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付を行い、相手方がこれに対して当該一定の事由の発生の可能性に応じたものとして保険料を支払うことを約する契約」を保険契約と定義している。

そして、保険法2条の4では被保険者を特定し、生命保険契約では、「その者の生存又は死亡に関し保険者が保険給付を行うこととなる者」としている。

さらに、保険法2条の1で、保険給付を受ける者として保険金受取人を定めている。

文脈上から、「財産上の給付」と「保険給付」は同一であると考えるが、保険給付を行う対象者としての被保険者と、保険給付を受ける者として保険金受取人の違いはなんなのであろうか。

控訴人は、被保険者は死亡した母であり、保険金受取人は、2名の子供たちだと考えている。

保険会社は母に財産上の給付を行い、代表受取人である控訴人が金銭の支払いを受けた。つまり、保険会社が行った母への財産上の給付は、母の財産であり遺産であると考えている。

遺産を承継する手続きは民法で厳しく規定されているが、死亡保険金の場合、民法の規定に縛られずに、承継する手続きではなく請求行為によって保険金受取人の財産となる。

控訴人は、死亡保険金は遺産であり相続により承継されるものであり、民法の相続の規定に従わずに請求行為によって保険金受取人の財産として形成されことに一貫して問題定義をしている。

② 財産上の給付の対象は保険金受取人ではない

判決では、死亡保険金は保険金受取人の固有財産であると結論をした。つまり、保険会社が行う財産上の給付の対象が保険金受取人と考えたとしか考えられない。

保険会社が保険給付を行うこととなる者が被保険者であるが、保険金を受け取る保険金受取人が被保険者と考えれば、請求行為によって金銭の支払いを受けるという論理が成り立つ。

しかし、保険法58条では保険契約の解除の権利を被保険者に与え、また、74条では、保険金受取人の変更の条件として被保険者の同意を求めている。

つまり、財産上の給付の対象となる被保険者に保険金受取人を含めることは保険法に照らしても無理である。

保険会社が被保険者に行う財産上の給付は、死亡した母の財産であり遺産である。遺産は請求によって第三者に渡ることは民法で厳しく縛られていて、その手続は相続という承継の手続きのみである。

控訴人は、死亡保険金を保険金受取人の代表として受け取ったが、相続財産として宣言し、民法の手続きによる分割を主張していて、この行為に不法行為はない。

また、死亡保険金が保険受取人の固有財産であるならば、相続税の対象とするのも問題が出てくる。

保険法、税法は、上位法である民法に縛られる。民法の規定と矛盾する下位法を認めるならば、日本国は、法秩序のない無法国家であることになる。

保険会社が行う財産上の給付の対象である被保険者は誰なのか、保険金受取人の固有財産という法的論拠は何なのかを、明らかにすること高等裁判所に求める。

2 遺言規定に準拠していない生命保険契約の有効を認める本判決は違法判決である

保険法40条の4では、生命保険契約を締結時に「保険金受取人を特定するために必要な事項」の書面の提出と義務づけている。これは、受取人が複数の場合に保険会社は、保険金を分割で支払うことができないからである。

なぜなら、遺産を分割するのは民法の相続の規定に従わなければならないからであり、被保険者の死亡後に締結される生命保険契約は生前契約であり、民法の遺言規定に準拠しないからである。

この理由で、保険保険法40条の4では、生命保険契約を締結時に「保険金受取人を特定するために必要な事項」の書面の提出と義務づけていて、保険金の振込先は代表受取人の1名に限定している。当該死亡保険金の代表受取人は控訴人である。

判決では、控訴人と被控訴人が受取人と記載された保険契約の有効性を認め、生命保険契約に記載された分割割合の請求を認めているが、保険法では、死亡保険金の分割を認めていない。

判決では、生命保険契約の有効性を認め生命保険契約の分割割合を根拠とする請求を認めているが、生命保険契約を根拠とする分割請求は、保険金受取人を規定した保険法40条の4と、生前契約を厳しく規制した民法960条に反する違法判決である。

第960条
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
民法第967条(普通の方式による遺言の種類)
民法第968条(自筆証書遺言)
民法第969条(公正証書遺言)
民法第970条(秘密証書遺言)

↑ PAGE TOP