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保険者が支払う財産上の給付は被保険者に行われる

保険法では2条の1で保険の定義を、当事者の一方が一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付を行うことを約し、相手方がこれに対して当該一定の事由の発生の可能性に応じたものとして保険料を支払うことを約する契約をいうと定めている。

保険法
第二条の一
保険契約 保険契約、共済契約その他いかなる名称であるかを問わず、当事者の一方が一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付を行うことを約し、相手方がこれに対して当該一定の事由の発生の可能性に応じたものとして保険料を支払うことを約する契約をいう。

そして、2と3で、財産上の給付を行う当事者として「保険者」を定め、保険料を支払う当事者として保険契約者を定めている。

さらに、4では、被保険者を定めていて、生命保険の場合は、「その者の生存又は死亡に関し保険者が保険給付を行うこととなる者」と定めている。

5では、保険給付を受ける者として保険金受取人を定めている。

本件の死亡保険金の場合、被保険者に対して生命保険会社が財産上の給付を行い、その請求権を保険金受取人とすることを定めている。

被保険者に行われる財産上の給付は被保険者の財産であり、被保険者が死亡した時点で相続財産である。

請求権の行使で形成される財産は相続ではない

その相続財産の請求権を保険法では保険金受取人に与えている。つまり、保険金請求権は保険金受取人の固有の権利といわれるものだ。

保険者の給付する保険金が保険金受取人の固有財産とすれば、保険金受取人が請求権を行使して固有財産権を主張するのは問題はない。

しかし、保険法では2条の4のロでは、保険者が支払う財産上の給付は被保険者に対するものであり、保険金受取人は保険給付を受ける者とされているのみである。

死亡保険金は被保険者の遺産であり相続財産である

実務的に考えれば、死亡した時点で被保険者の口座は閉鎖されるから、保険者は財産上の給付ができない。また、被保険者が死亡した時点で、保険契約が遺言規定に準拠していないから死亡保険金は債権として成立せずに保険金受取人に譲渡できない。

この理由で、保険金請求権として、被保険者に対する財産上の給付を保険金受取人に受けてもらうと考えるべきであろう。近年、生命保険会社が死亡保険金の受取人を法定相続の範囲での親族としているのは、死亡保険金は相続財産であると認識しているからである。

このように考えれば、控訴人が代表受取人として保険金請求権を行使して固有財産にした後に、相続財産を宣言し、その分配や譲渡である相続手続きを民法の規定に求めるのは間違っていない。

控訴人は、死亡保険金は相続財産であり、その分配や譲渡を規定するのは民法の規定に準拠することを主張し、かつ、遺言規定を満たしていない生命保険契約を有効とする判決は違法判決だと主張している。

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