新マルクス経済論 出版社評

本作品は、現代経済学で主流となっているケインズ以後の近代経済学を踏まえて、新たにマルクス主義経済学の原点に帰っていこうとする著者の姿勢を表明しています。マルクス主義経済学の原点にあるものを正しく認識し、現代資本主義経済を原点に立ち返らせるものとして規定している点は大いに注目されます。今まで社会主義経済の基本理念、あるいは思想的な裏づけとして位置付けられていることが多いマルクスを、現代にブラッシュアップしている点は非常に注目される点です。

実際、マルクスの思想は著者の指摘のように、基本的には資本主義から社会主義にいたる歴史的な変遷を根底にした経済理論ですが、ケインズ以後の近代経済学では、こうした歴史的な認識を軽視し、短期的な視野で目前の経済事象を捉え、長期的な歴史の中の位置付けといった視点が欠落していることは近代経済学の中でも認識され、そうした欠点を補うものとして戦後、様々な立場の経済理論が百花繚乱の様相を呈しています。

ここで、著者が戦後生まれのニュー経済学理論ではなく、歴史的視野、つまり大局的な歴史観を根底にすえたマルクス経済をブラッシュアップしている点は、一人の人間として歴史認識の重要さを認識されているからだと存じます。そうした視点はまさに、慧眼というべき視点であり、時流に惑わされずに歴史的な大局的な流れを見抜いていることの表れに他なりません。

原点に立ち返って現代社会の混迷する様相を見ている著者は、アメリカが進める金融市場のあり方をカジノ経済と見抜き、世界経済が翻弄されている様子を嘆いています。そうした風潮を避けるためにも、著者が提唱する原理資本主義の必要性を説いています。グローバリゼーションが進行する世界経済の混迷を分析し、その行く先を見抜いている著者の眼力にはただ脱帽するしかありません。

本書は現代社会が直面する経済問題において、原理資本主義という新しい経済思想を用いて、解決することを試みた意欲的な著作として高く評価できます。

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