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民需の経済原則に即したリサイクル産業を
日時: 2004/05/01 14:18
名前: hashimoto

1 リユースとリサイクルの違い

 産業革命以降の経済は、大量の鉱物資源を、製品に転化させてきました。その製品の末路は、廃棄物となっていたのですが、鉱物資源の可採年数の限界や環境への影響など、21世紀は、廃棄物の資源として再利用せざるを得ない時代となっています。

 これは、いわゆる循環型経済システムと呼ばれているものですが、製品を再利用すること(リユース)と、製品を熱エネルギーに換えたり、原材料として再生産に利用すること(リサイクル)に大別されます。

 リユースは、民間レベルで産業として成長して社会も認知されていて、自動車や家電製品は、アジアや中東、ロシアなど世界各国に輸出されています。これに対して、リサイクルは、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンの家電大型製品やパソコンなど、官主導で産業と市場が形成されています。

 日本では、リサイクルはメーカーの義務とされ、その負担は消費者であるという、基本的なコンセプトとなっっています。そして、このコンセプトに従って、家電リサイクル法やPCリサイクルなどの制度があります。

2 統制経済ではリサイクル産業は成長しない

 問題は、リサイクルが事業者の義務となると、この分野の産業への新規参入が、事実上閉ざされてしまうということです。これは、消費者からリサイクル料と運搬費を徴収して、自治体や販売店が各メーカーに運んで処理を依頼している状況では、リサイクル産業に参入するのは既存のメーカーだけになるからです。

 また、家電リサイクル法で定められた、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンの家電大型4品目は、年60万tの排出量があり、その約8割が製品の買い替え時に小売業者によって引き取られ、地方自治体または民間処理業者に渡って処理されているのですが、現状では大半はリサイクルされていません。これらは、焼却、直接埋立て、もしくは破砕後に埋立て処理されているのです。また、小売業の段階で、引き取られた家電製品がリユースに回っている事件も発覚しています。

 問題は、リサイクルをメーカーの義務とすることで、競争意識が芽生えず、リサイクルの技術の進歩も、産業としての成長も起こらないことです。経済産業省は「事業者と消費者等の関係者の創意工夫を最大限に活かすことで、市場メカニズムを有効に発揮できる」としていますが、そのために、規制的手法を主体とする政策をとるならば、この産業は統制経済の産業となり、自由経済の市場メカニズムは絶対に生まれません。

3 自由経済市場に即した循環型経済システム

 リサイクル産業は、製品を解体して、再生産にリサイクルする原材料ごとに分類する工程が重要です。そして、この分野は、多品種を扱う工程であり、機械化よりもマンパワーの方が、作業効率が高い分野です。その意味で、この分野は、零細企業や個人に参加する門戸を広げ、解体費用をメーカーから回収するようにして産業を起こしていくべきでしょう。

 生産者責任の中で、リサイクルや処分費用を、製品価格内に内部化されるというEPR(Extended Producer Responsibility)とは、あくまで、費用負担の問題であり、生産者が、リサイクルや処分を義務とする意味ではありません。産業を形成する時には、その産業への企業参加は自由であるべきであり、最初から参入する企業が限定している産業では、資本主義の経済原則は働きません。

 つまり、リサイクル料は、PCリサイクル制度のように製品の価格に上乗せするべきです。そして、販売時にリサイクル料をメーカーから徴収しておいて、製品の解体費用として当てるべきでしょう。そして、メーカーや品目にこだわらず、解体業務の門戸を零細企業や個人事業者に広げ、出来高でプールした中から、解体費を支払うようにするのです。

 そして、分別された部材や部品を回収するルートをつくり、それをリサイクルして、原材料として生産現場に供給できるようにするのです。分別された部品や素材は、最新の技術と設備のある工場でリサイクルし、それを市場に供給することで、コスト意識を持たせることが重要です。

 当初は、設備投資や生産性の問題で、リサイクルした原材料の市場価格との差額を補助金などで支える必要があるでしょうが、コストを基本とした競争主義は、補助金を必要とはしなくなるでしょう。、製品の価格に転嫁することで、メーカー側もインバース-マニュファクチャリングの技術を進歩させるのです。