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法曹はスペシャリストであるべきだ
日時: 2002/12/05
名前: hashimoto

司法制度改革審議会意見書は、現在の司法制度のありかたについて、今後、国民生活の様々な場面において法曹に対する需要がますます多様化・高度化することが予想される中での21世紀の司法を支えるための人的基盤の整備としては、プロフェッションとしての法曹(裁判官、検察官、弁護士)の質と量を大幅に拡充することが不可欠であるとしています。

 法曹の質と量を大幅に拡充することは、時代の要求であり当然であると思いますが、その質と量を、司法試験のあり方に原因を求め、法科大学院構想のように、教育論にその解決を求めていくのは、理念が先行するだけではないでしょうか。

 そうではなくて、法曹はプロフェッションとしてではなく、ジャッジメント=審判であり、法のスペシャリストであるべきでしょう。憲法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、労働法・社会法、医療法・公衆衛生法、産業法・知的財産法、とそれぞれの分野で法曹がゼネラリストである必要はありません。それぞれの分野で、スペシャリストであればいいのではないでしょうか。現行の、税理士や会計士、弁理士なども、この中に入れてしまえばいいのです。

 法曹へのニーズは、多岐にわたり、すべてに精通している必要はありません。また、そのような法曹人がいたとしても、わずかではないでしょう。民法や、商法、労働法や、医療法など、本来、主権者である国民のための法が、機能していないのは、法のゼネラリストを自称する法曹人が、それぞれの分野に精通していなく、法を都合のいいように解釈して、法をねじ曲げているからです。法は主権者の国民のためにあるのではなく、既得権益を守るために存在するのが現実ではないでしょうか。

 社会が法曹に求めるニーズは、国民の係争問題に的確に答えられる法曹であり、また、競争原理を用いて、経済的負担を軽減し、平等に、開かれた司法を求めています。それを実現する為に、法曹の質を高めるには、対象とする法ごとに、スペシャリストを養成すればいいでしょう。そして、業務の範囲を限定した資格制度を導入すれば量も確保できるではないでしょうか。

 日本は、英国と違い憲法がある。慣習法ではなく、成文化した憲法という法規範があるのだから、判例主義であってはいけない。行動や判断の基準である法規範にそって、事案に対処するべきで、審判員であるべきだ。それを公平にできる人格や思想が必要となります。

 しかし、法規範をないがしろにし、法を解釈するなどと御都合主義の特権を振り回す司法の現実があります。このような結果を招いたのは、「国民の社会生活上の医師」とか、「かけがえのない人生を生きる人々の喜びや悲しみに対して深く共感しうる豊かな人間性の涵養、向上を図る。」などと、法曹人は聖人君子であるというような奢った意識があったからではないでしょうか。

 法曹人をすべてゼネラリストにする必要はありません。各分野の法のスペシャリストを育て、限定した司法の資格を持つ法曹を社会に送り出し、彼らは、限定した実務の中でその力量を高めるべきです。そして、法曹は、審判を業務とすることを自覚し、法規範というルールに基づいて審判をくだすべきです。社会は、法曹に聖人君子を求めてはいません。それを求めるのは、法を解釈という行為で、既得権益とするいまの法曹人の自己中心的な考えでしかありません。
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