「自由と責任」、「権利と義務」

 自由とは基本的人権の行使を指し、権利とは国家と国民の契約です。

 生存権や言論・思想、そして宗教などは、人間が持って生まれた権利である基本的人権であり、この行使を自由といいます。この基本的人権は、国家によって国民に与えられるものであり、国家の形態により、基本的人権の範囲はまちまちです。すべての基本的人権が認められるのは権力者であり、その意味で、主権が国民にある民主主義国家では、自由の裁量は大きいと言えます。

 これに対して権利とは、国家と国民との契約であり、国家を運営・維持するために定めた約束事です。この権利は、権力と国民との関係で権利よりも義務が多くなったりします。君主国家では義務が多くなりますし、主権が国民にある民主主義国家では、権利が多くなります。

 そして、自由には責任が、権利には義務が相関関係として成立しています。

 基本的人権の行使である自由には、他人の基本的人権を侵害した場合には刑罰という責任を取らなくてはなりませんし、国家と国民との契約である権利には、国民が国家に行う義務が生じます。この意味で、自由には義務はありませんし、権利には責任を伴いません。

 たとえば、生存権を侵害された場合に、加害者は刑罰という責任を取らされますが、被害者の訴訟する権利における損害賠償という義務が負わされます。これが刑事事件と民事事件の違いです。戦後の日本では、自由と権利の違いを理解せず、責任という概念を捨て去りました。犯罪に対する抑制機能は、刑罰という責任なのですが、日本では、懲役などの刑罰を義務としてしまっているのです。

 繰り返しますが、基本的人権の行使を自由といい、他の人の基本的人権を侵害した場合には刑罰という責任を取らなくてはなりません。また、国家と国民との契約である権利には、国民が国家に与える義務が生じ、義務の不履行には刑罰や賠償という責任を払わなければなりません。

2004/12/20