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都市再生ファンドという "からくり"
日時: 2005/11/22 09:30
名前: hashimoto

(1)不動産投資ファンドを支える"都市再生ファンド"

 今日の朝日新聞で不動産ファンドに関する記事があった。記事では、05年度上期(4〜9月)の企業などによる大口の不動産取引で、「不動産投資ファンド」が買い手の約6割を占めたとし、96年度の調査開始以来、東京の地価が15年ぶりに上昇してバブル期以来の活況を見せているという。

 記事には書いていないが、「官から民へ」の経済政策を推進する竹中平蔵は、滞留する民間資金を優良な都市再生プロジェクトに誘導する仕組みとして、平成14年度補正予算で「都市再生ファンド」が作られている。

 この都市再生ファンドとは、オフィスビルや商業施設など家賃収入が見込める物件を購入する資金として、政府が認定する事業者であれば、50%を都市再生ファンド投資法人が出資するというものだ。


(2)つなぎ融資の非遡及型融資と事業継続資金である投資ファンド

 これには前段の話があって、横浜の「ランドマークタワー 」や東京の「東京オペラシティ」、「六本木ヒルズ」などの建設資金を調達するにあたり、事業計画で見込める収入を担保に融資するという非遡及型融資を理解しなければならない。

 個人保証や担保などを取らない非遡及型融資であるが、問題は、民間都市機構という特殊法人が、都市部では75%その他でも30%の政府保証をしていることである。つまり、担保を取らないといいながら、政府保証があるのだから、借り手側にとってはこんないい話はない。

 政策的には、この非遡及型融資とは、霞ヶ関の官僚から公共事業の裁量権を取り上げて「官から民へ」をスローガンに、政府保証を原資とした都市開発事業の裁量権を民間事業者に委譲したものに他ならない。

 非遡及型融資は建設資金の融資であり事業による収入が見込めるまでの短期融資である。事業が順調であれば、短期融資を銀行などから借り替えるのが前提の融資なのである。もし、事業計画どおりに収入が見込めなければ、借り替えはできない。


(3)都市再生ファンドという"からくり"

 回転ドアの速度を上げて来客数などを上乗せした事業計画が絵に描いた餠になる前に、政府は、都市再生ファンドという"からくり"を作った。

 "からくり"というよりも幼稚な詭弁でしかないのだが、借り替えの資金の50%を民間都市機構が後ろ盾となる"都市再生ファンド投資法人"が用意するというものだ。

 投資ファンドは、50%の資金で、オフィスビルや商業施設を手に入れることができ、民間都市機構は、非遡及型融資による融資の焦げ付きを先送りできる

 また、非遡及型融資の物件は、必ず、融資を受けるための特定目的の子会社を設立しているので、その運用会社に比例して、都市再生ファンド投資法人を増やすことができる。

 財政投融資を非遡及型融資の際の政府保証に衣替えをして日本型社会主義経済を維持した上で、天下り先の確保という都市再生ファンド投資法人をつくるなど、霞ヶ関の官僚らにとっては、一石二鳥のうまい話でしかない。