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経済の基本は「供給」と「需用」の関係である。
日時: 2005/04/15 11:37
名前: hashimoto

■ 朝日新聞の頓珍漢な経済批評

 「景気の緩やかな回復傾向にもかかわらず、消費者物価がなかなか上がらない。」と、日銀は2005年度の消費者物価指数の見通しを下方修正すると発表した。

 朝日新聞は、物価が上がらない要因の1つに電話料金の「価格破壊」を上げているが、問題は、日銀のいう景気回復の基準は何かということを求めなければ、その原因(要因)などわかるはずがないだろう。

 日銀のいう景気回復の基準は「企業の業績」である。確かに、企業の生産性が高まることで、業績が改善され、企業間の競争によって資本の寡占化が進めば(いわゆる勝ち組みと負け組み)価格は下げ止り、上昇に転ずる。まして、原材料費(原油価格を含む)は高騰している状況で、消費者物価は上がるはずである。

■ 何故、物価は上がらないのか

 しかし、何故、物価は上がらないのか。それは、価格を決める要因は、供給と需用の関係という経済の基本を忘れているからである。

 政府と日銀の経済政策は、企業の業績回復を基本にしていて、生産拠点を労賃の安い海外に移したり、ダイエーのように企業再生をしたりと、いわゆるバブル崩壊前の企業業績を求めている。そして国策として、生産性の向上を上げるために、派遣労働の規制を緩和し、設備投資を促進するために量的緩和を行なった。

 生産性に関しては、人件費負担の高い中高年を中心に希望退職制度でスリム化し、不足分は派遣社員で補った。また、パソコンとインターネットの普及で、間接労働者(ホワイトカラー)の生産性を向上させるリストラの概念は、サービス残業などの労働強化に取り違えてしまった。実質の生産性は向上しなかったのである。

 また、量的緩和で供給されたマネーは、株式を中心とした金融市場に流れ込み、資金のだぶついた企業は、競っいて、安い労賃と市場を求めて東南アジア(特に中国)に投資をした。そして、国内では企業の再生に力点を置く政策を取った。結果、日本国内の経済は、派遣労働者の増加で、消費の中心であった中産階級が崩壊し、中国市場の拡大で、企業の業績は回復したが、消費を担う流通業では、ダイエーなどに象徴されるように企業再生は進んでいない。、

 このように、政府(竹中平蔵)の経済政策は、「供給と需用」という関係ではなく、企業再生により供給量を維持しながら、量的緩和政策によるダム理論で消費=需用が回復するという政策なのである。しかし、現実的に、企業の業績が回復しているのに物価が下げ止まらない。

 これは、経済の「供給と需用」との関係で、インフレ=供給<需要 デフレ=供給>需用という経済の基本概念をおろそかにしていたからであることは明白だ。

■ 日本経済再生のポイントは中産階級の再構築

 ベルリンの壁の崩壊以降、共産主義陣営が自由主義経済に参入し生産力が上がり、世界的に供給過多の状況になった。しかし、日本は、バブル経済の崩壊という、信用供給の収縮による土地下落などのデフレから、供給過多によるデフレへの時代の流れを理解できず、いまだに、日本経済が、供給過多であることを認めずに、企業再生などで供給能力の回復と維持を国策としている。

 供給過多の状況と、消費を担う中産階級の崩壊。この状況でデフレが解消するはずがない。いまは、中産階級を再構築し、消費力を回復させ、企業の淘汰を受け入れ、生産力を調整するべきである。

 失業問題に対しては、公務員を中心としたワークシェアリングで雇用創出をはかり、公務員の給与を引き下げることで、中産階級を再構築するべきだ。また、高騰した日本の人件費が引き下げられることで、輸出などの競争力も回復する。

 日本の労働者は、「名目賃金」ではなく「実質賃金」を求めるべきであり、サービス残業などの不当な労働強化ではなく、「時間給」に換算した生産性の向上を求めることで、企業の競争力も向上することを理解するべきである。

■ アメリカ経済は日本の教科書とはならない

 竹中平蔵が教科書とするアメリカ経済は、戦争ビジネスを公共事業とする国であり、カジノ経済で生まれる経済格差という歪を戦争ビジネスで吸収している。

 これに対して、日本は国内総生産額500兆円の経済でありながら、特別会計を含める実質的な国家予算は、200兆円以上あり、日本の経済は、社会主義経済色の強い経済であることがわかる。しかも、200兆円もの国家予算は、次世代に赤字国債という借金を背負わせて調達したものだ。

 日本が社会主義経済であること。そして、アメリカもまた、戦争ビジネスを公共事業とする統制経済の強い国家であること。ウォール街を中心とした金融市場はカジノ経済であり、金融市場で動く貨幣と実体経済で動く貨幣の乖離を直視すること。

 これらの部分を見落とし、日本にカジノ経済を取り入れようとする竹中平蔵は、教科書を丸暗記することを勉強とし、教科書を探し求めることを研究とする、戦後の家畜教育世代の典型的なエコノミストである。