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会社は誰のためにあるのか
日時: 2005/03/13 14:53
名前: hashimoto

 会社は誰の為にあるのか。日本の企業統治の問題が、西武鉄道株の虚偽記載やライブドアによる企業買収などで、芸能エコノミストが、コーポレートガバナンス(企業統治)とかステークホルダー(利害関係者)などの横文字をつなげて「会社は誰の為にあるのか」という問題に、にわか仕込みの論理を展開している。

 いまの日本の経済学の教科書は、Master of Business Administration(MBA)という学位へのプログラムが基本となっている。当然、「会社は誰の為にあるのか」という模範解答は、株式会社であれば株主のためとなる。

 しかし、アメリカ経済は、錬金術としての金融市場を中心としたカジノ経済であり、金融市場と実体経済で流通するマネーサプライの乖離は、完全にコントロールされた経済でなければ成立しない。つまり、カジノ経済は、市場経済や自由経済ではなく、中央集権政府によるコントロール下にあり、その実態は民主主義の名を借りた社会主義経済である。

 会社は株主のためにあるというMBAプログラムの模範解答の答えは、社会主義国の国営企業と同じであることを理解しなければならない。カジノ経済を理解しないで「会社は誰の為にあるという問題提議に、従業員や顧客などのステークホルダー(利害関係者)という言葉をつなげるなどナンセンス以外の何ものでもない。

 資本主義の原理原則から言えば「会社は誰のためにあるのか」という問題提議が間違っていて正しくは「会社は何を求めるのか」という問題提議となる。この答えは「利益」だ。会社は利益を求めるためにある。では利益は誰のためにあるのか。ここで利害関係者が登場するのであり、利益は、資本と提供する株主と、従業員のためにあるのだ。

 一般会計では利潤とは、総収入から生産のための費用、つまり、賃金・地代・利子・減価償却費などを差し引いた残りとしているが、原理資本主義では、「賃金」と地代・利子・減価償却費などの経費を別にして総生産額から原材料費と機械設備などの減価償却分を差し引いた、人件費・役員報酬費・株主への配当金を利潤としている。そして、人件費・役員報酬費・株主への配当金の割合を労使で協議するべきで、この分配率を労働分配率としている

 労働者が資本家から剰余価値を搾取されたものを利潤とする考えでは、資本家と労働者の対立関係は解消されないが、利潤を、人件費・役員報酬費・株主への配当金と考えれば、マルクス主義者のいう搾取という矛盾はなくなる。

 会社は誰のためにあるのかという問題提議は社会主義経済社会の話であり、資本主義経済社会では「会社は何を求めるのか」という問題提議が正しい。そしてその答えは「利潤」であり、「利潤」は人件費・役員報酬費・株主への配当金の「労働分配率」を労使で協議することで、利害関係者(ステークホルダー)の答えも導き出され、搾取という概念は資本主義から消えるだろう。

 さらに付け加えれば、利潤(利益)は、消費行動を行う「人」に対して配当するべきであり、企業の投資という行動に利潤を結び付けてはならない。消費と生産という循環システムが経済であり、貨幣経済におけるこの消費と生産という循環システムと民主主義の相関関係に最も優れたシステムが資本主義なのである。