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日本の年金制度は資本主義では成立しない
日時: 2005/01/30 18:33
名前: hashimoto

 退職金(企業年金)には二つの意味合いがあります。一つは、終身雇用を支える「功労・慰労金」であり、今一つは、「賃金の後払い」です。

 後者の「賃金の後払い」は、高度成長時に、物価にあわせて賃金を上げずに、その資金を投資に回すために作られた制度であり、利息を上乗せして退職時に支払うことで年金としての意味を持たせるために作られました。。

 これを国は制度として、功労・慰労金の意味合いの退職金を「中小企業退職金共済制度(1959年)」、「税制適格退職年金(1962年)」で、賃金の後払いの意味合いである退職金を「厚生年金基金(1966年)」「確定給付企業年金(2002年)」で法規制しています。法律上では、功労・慰労金の退職金と、賃金の後払いの年金は明確に区分けされているのです。

 現在の日本では、退職金は賃金の後払いとして扱われ、本来賃金の後払い制度であった年金は社会保障の枠の中の年金として扱われています。基本的に社会保障というのは公平な給付が原則であり、収入の格差が給付に反映される年金制度はこの原則に反しています。リタイヤ後に経済格差は、現役時代の収入格差で求めるべきであり、それが「財」というものです。「財」を求めるのは資本主義社会では当然であり、その格差を認めるからこそ経済に活力が生まれます。

 しかし日本では、賃金の後払い制度では説明できない年収の何倍もの退職金と、すでに財源が破綻している自己責任型の年金制度は、公務員と一部の大企業の労働者だけの特権となっています。

 高度成長時代は、退職金と年金は、日本人の高水準な貯蓄を形成し、それは、財政投融資という形で、公需への投資を支える原資となっていました。しかし、バブル以降のデフレ経済の中で、退職金や年金の財源が崩壊しているにもかかわらず、国内の消費を支える為に国債を発行して、国はこの退職金と年金制度を保護してきました。

 結果はいうまでもありません。本来、資本主義経済で退職金のような賃金の後払いはありません。なぜなら、インフレとデフレは交互に起きるからです。また、物価にあわせて賃金を上げずにその資金を投資に回し、その運用益を見込んだ返済金を年金とする手法は、デフレ経済では成立せず持続可能な年金制度であるはずがないのです。

 持続可能な年金制度とするには、賃金の後払いとしての退職金や年金を否定し、財の形成は経済格差によって持たされることを理解し、その上で、社会保障制度の枠の中で、退職金や年金を考えなければなりません。

 社会保障制度は、公平な給付が原則であり、リタイヤ後の生活保障としての年金は、公営住宅の貸し出しなど、金銭以外の給付も視野に入れるべきで、世代間扶養システムとしての年金の財源は租税方式とするべきです。