都市再開発事業に見られる新手の財政投融資 |
- 日時: 2004/05/19 12:12
- 名前: hashimoto
- 六本木防衛庁跡地の再開発事業を手がけている三井不動産など6社は18日、起工式を行い、計画の詳細を発表した。オープンは07年春だという。
六本木ヒルズもそうだが、この事業は、事業の収益の見込みを担保に、資金を調達する「ノンリコースローン(非遡及(そきゅう)型融資)」で行われる。これは、従来の不動産を担保とする融資と違い、事業の収益予測を担保とするものであり事実上の無担保融資である。従って、巨大プロジェクトである六本木ヒルズは、付加価値の高いビルを目指し、客単価の高いテナントを集めることで、担保に見合う収益計画が出来上がるというわけだ。回転ドアの事件も、この収益見込みにあう来客数が必要だったのだろう。
問題は、収益が見込みに達しない場合であるが、この融資では、銀行はまず短期のつなぎ資金(建設資金)を融資して、2年とかの一定の期間をおいて、収益実績を確認した上で、中長期的な融資に切り替えるというものである。金融機関としては中長期的な融資がメインであり、つなぎ資金(建設資金)はリスクとなるはずだが、ここにカラクリがあり、この部分の融資には、政府保障がついているのだ。つまり、事業に失敗しても、事業者も金融機関側もリスクを背負わないということだ。
従来の融資 ノンリコースローン 担 保 土地など 事業の収益計画 金融機関のリスク 担保の回収 政府保証
これは、第三セクターによる、箱物事業と同じ構造であり、従来の無責任と責任転嫁を前提とした公共事業の延長でしかない。竹中平蔵の「官から民へ」というのは、無責任という既得権益を、天下り先である公益法人から、大企業を中心とした営利法人に移し変えたものなのだ。結果として、日本の各都市で行われている再開発は、従来の財政投融資による事業の延長であり、国債のかわりに、政府保証が膨らんでいる。
六本木防衛庁跡地の再開発事業では、サントリー美術館が移転することが決まり、世界的な高級ホテルチェーン「ザ・リッツ・カールトン」など、高級レストランやブランド店などが約150店入居する。 しかし、六本木ヒルズでもそうだが、客単価5万円というレストランで食事をする層がどのくらいいるのだろうか。経済格差が広がる中で、観光名所となるだけでは、事業の失敗は目に見えている。
いまの小泉政権での構造改革は、霞ヶ関と経団連の間での既得権益の主導権争いでしかない。つまり、既得権益側の中での政治対立でしかないのだ。そして、日本の二大政党政治の流れも、この既得権益側の中での政治的対立でしかない。既得権益を擁護する政治では、経済格差は広がり、機会の平等はない。このような社会では、階層化が進み、社会のモラルや経済の活力が失われ、国力は地に落ちるだろう。ベルリンの壁の崩壊は、日本でも必ず起きる。
日本の政治家は、道路公団も第三セクターも、破綻してから問題にしているが、官僚らの行動形態は、終始一貫して、無責任を基本とする行動であり、無責任を成立させるためにアレコレを策を弄しているのである。しかも、それは、非常に単純なカラクリであるのだ。誰でもいいから、この無責任という既得権益にメスを入れるものはいないのか。非既得権益側にたって政治をするものはいないのか。結果の平等ではなく、機会の平等を掲げれば、このような無責任という既得権益が跋扈する社会はならないはずである。
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