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議員秘書給与法の改正について
日時: 2004/02/13 14:05
名前: hashimoto

 政策秘書給与詐欺事件で辻元清美氏の執行猶予付きの有罪判決が確定した。私は有罪判決を受けた辻元氏に犯罪性はないと思っていて、むしろこの問題は、国会議員の世襲制を支える制度であることを浮き彫りにしたと考えている。

 国会では、国会議員秘書給与法の改正の議論が始まるが、この議論のたたき台として、衆院議長の諮問機関は、秘書制度の見直し案の柱として、名義貸しの温床といわれた兼職の原則禁止や、3親等以内の親族の採用禁止、70歳定年制の導入を持ち出しているという。

 しかし、毎度のことながら、枠をかぶせることが立法業務とする立法能力のレベルの低さには、ほとほとあきれ返るしかない。なぜ、このようなことになるのか。いろいろ考えてみたが、その原因は、立法府に従事するものに、法の基本概念が欠如しているからではないだろうか。

 まず、法には憲法などの行動や判断の基準となる規範となる法が上位法としてあり、下位法として、制度としての法、その制度を運用するための規則としての法がある。

 この規範としての法と、制度としての法、規則としての法、という基本的な法の概念の整理を、立法府の人たちは誰も理解していない。いやむしろ、考えたこともないだろう。これを義務教育レベルの国語力で組み立てれば、憲法を解釈するなどという世界が首をひねる憲法9条の議論など存在しなかった。

 ここでは、憲法9条の問題は横に置いといて、議員秘書制度に関してであるが、衆議院の諮問機関の見直し案のように、現行制度を容認した上で、制度を運用する規則を議論しようとしていることは決定的に間違っているといわざるを得ない。

 なぜなら、現行の政策秘書制度は、国会議員の世襲制を支える制度であることが問題なのであり、政策秘書給与の流用は、この制度の恩恵に授からない議員の議会活動の裏技として存在していたからだ。重要なのは、現行制度そのものに大きな問題がある。従って、規則を改正することで問題は解決しない。

 また、「議員及び選挙人の資格は、法律でこれを定める。ただし,人種、信条、性別社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。」とする憲法44条や、憲法49条の議員の歳費、憲法51条の議員の発言・表決の無責任など、いまの政党政治や政党助成金との関わりあいが生じてくる問題であり、上位法のある憲法とも深く関わりあう問題でなければならない。

 つまり、現行制度を否定して、新しい制度としての法が必要なのであり、抜本的な法改正が必要なのである。そして、まず議論するべきは、制度の基本概念であり、その基本概念に則して、制度としての法体系を作ることである。その制度の運用に関わる規則としての法は、事務方にまかせばいい。