貨幣の価値と株式市場について |
- 日時: 2005/11/05 11:30
- 名前: hashimoto
- (1) 貨幣に価値はあるのか
本来価値とは、物の値打ちとか有用性をいうのであり、これを貨幣を用いて表したのが貨幣経済です。資本主義も社会主義も貨幣経済を基本として成立する経済であり、価値を客観的に表現する道具として貨幣があるのです。
しかし、現在の経済(カジノ資本主義)では、貨幣そのものに価値があると定義しています。これは、貨幣と利息の関係から導くもので、プラス利息を前提とした金銭の時間的価値とか割引現在価値の概念です。
これに対して経済格差の元凶は利子の増殖にあるとして、カジノ資本主義を否定する論理として、通貨そのものの価値は時間とともに減っていくという「マイナス利息」を前提とした地域通貨など概念があります。
しかし、そもそも貨幣に価値はあるのでしょうか。
貨幣経済では、物の価値を貨幣に置いて、生産される多様な物=製品の流通や消費の経済過程を成立させます。これに、資本主義経済では、貨幣を資本と置き換えて、投資という経済行動を確立し、利息や配当という概念が生まれました。この経済行動は資本主義では、金融と呼ばれ、利息を支払うことでお金を集め、その運用利回りとの差益を利潤とするものです。
マルクス経済学では、利潤は「生産過程で労働力の「搾取」によって生み出される」として資本家と労働者の階層化を主張していましたが、原理資本主義では、株式の配当や利子・家賃・地代などの労働しないで得る不労所得者と、労働によって所得を得る労働所得者と分類しています。ここでは、利息や配当で得られる所得と、経済活動の報酬や労働者の賃金などの所得とを区別していません。
これを別の角度から考えると、不労所得者の利息や配当も、労働所得の報酬や賃金も、貨幣で客観的に表されているわけで、商品の価値を貨幣という道具で表されていることと同じであることに気が付きます。
これから言えることは、貨幣経済では貨幣は価値を客観的に表す道具であり、資本主義経済では、投資という経済行動の道具としての役割を担います。共通するのは道具としての貨幣であり、不労所得から生まれる利息や配当も労働所得で生まれる利益も、貨幣で客観的に評価される物と同じで、貨幣という道具で表されているに過ぎません。つまり、貨幣そのものには価値はないのです。
カジノ資本主義は、貨幣に価値を求めることによって金融をゲーム化していますが、物と連動しない貨幣の存在は、金融市場と実体経済の通貨供給量との差を天文学的にしています。貨幣そのものに価値があるというのはカジノ資本主義の詭弁以外の何ものでもありません。また、貨幣の価値は時間とともに減っていくという地域通貨の論者の考えでは、カジノ資本主義を否定する論理にはなりません。
(2) 株価は配当と連動する
資本を投資するというのは、工場を建てるとかの事業を起すために資金を調達することを指し、これには銀行から調達する間接金融と、株式や社債などで調達する直接金融があります。
間接金融の場合には、銀行は企業から利息という利益を得るかわりに、預金者に対しても利息を支払います。この両者の利息の差が銀行の収益となるわけです。
これに対して、株式などで資本を直接調達する場合、投資家は、一株あたりの配当という形式で利益を得ることができます。この株式に対して、企業は返済の義務がないのですが、その代わりに、株式市場での株の売り買いができるようになっています。
株式市場では、株は商品として供給されます。商品である株は、株価という価格で表されますが、この株価の価値の求めかたが問題なのです。
株主は、会社の利益から配当を得る権利をもっていて、この権利を行使するために、株主総会を通して経営に関与することができます。つまり、株主にとって企業価値というのは配当を指すのであり、株価と配当は連動するものといえるでしょう。
この配当とは、事業活動によって生み出すキャッシュフローでしかあり得ないのですが、カジノ資本主義では、このキャッシュフローに割引現在価値や事業外資産など勘案して企業価値をもとめ株価に反映させるDCF法(Discounted Cash Flow)などという評価方で株価を決めています。
割引現在価値はあくまで主観で判断されるものであり、事業外資産は、本業のキャッシュフローを隠す側面があります。管理通貨制度下では、キャッシュフローと連動しない株式市場は、実体経済とかけ離れた通貨供給量を招くことになります。
資本主義経済では、株の価値は、事業活動によって生み出すキャッシュフローで決まるのであり、それが株価として売り買いされるのが株式市場です。キャッシュフローと株価が連動することで、株式市場は実体経済とするのです。
健全な株式市場は、株価は配当と連動するもので、配当は、キャッシュフローと連動するというルールを基本に形成される市場でなくてはなりません。
(3) 資本主義の株式市場
企業の価値は、事業活動によって生み出すキャッシュフローを原資とする一株あたりの配当で決まります。この配当金額を基本として、株価と配当率が連動し形成されるのが株式市場です。
一株あたりの配当金額を基本に、株価と配当率が連動する株式市場では、実体経済を反映した市場が形成されます。
たとえば、A社の場合、一株1000円で配当金を100円、B社の場合には、一株1000円で配当金を50円。C社の場合は、一株1000円で、配当金を80円とします。この場合の株式市場の動きは下記のようになります。
この場合、A社の株価は、100円の配当を変えずに配当率を変えると、下記の表のような株価のようになります。この場合に、B株を1000円で売り、1090円でA株を購入すると、配当は百円ですから10円の利益がでます。A株を売った人は、C社の株を1050円で購入すると、売り買いの差額が40円と80円の配当金なので、120円の収入となり、差し引き20円の利益が出ます。
また、新規に株式を発行する場合には、投資事業の概要と予定配当金額を発表することとし、配当金がでるまで、期間があるときは、その株は、譲渡はできても売り買いはできないとするようなルールが必要
基本として、企業は1000円の場合の配当金を設定することを約束事とします。この配当金を基本に、株価と配当率が連動するのですが、企業の業績がよければ、配当金は大きくなるので、企業の動向で、配当率を狙って利益を求めることもありますし、上記のように転売で利益を出すこともできます。
企業は配当金額の最低額を設定し、その額を下回るようなことが出たときには、市場は、株の売り買いをストップしたり、新規株の発行するときは、事業内容と調達金額、予想配当額を発表するようなルールが必要となります。
株は資金調達の手段であり、株の価値は配当額で決まります。利益を得るために資金を投じることを投資といいますが、その利益は、配当に連動するものでなくてはいけません。
変動相場制では、株の価値を株価に直結してしまうと、配当額を無視した株価の設定が行われ、株式市場は、実体経済と乖離したものとならざるを得なくなります。株価を配当と連動させることが必要です。
| |