戦争の抑止力としての核兵器の拡散は止まらない現実の中で、ウラン濃縮事業は、貨幣発行の権限を民間事業者にゆだねる中央銀行制度とおなじように、民営化した企業が、商業用ウラン濃縮施設として管理生産しています。そして、下記の4社が世界全体の需要の約96%を賄っており、各社が10,000tSWU前後を供給しています。
① ユーセック(USEC) 米国
主要工場:ケンタッキー州パデューカ工場
② ユーロディフ(EURODIF):フランス、イタリア、スペイン、ベルギー、およびイランの合弁会社でフランスのアレバが約60%の株を所有)
主要工場:トリカスタン(フランス)ジョルジュ・べス工場
③ ウレンコ:英国、ドイツ、オランダの国際共同企業体
主要工場 カーペンハースト(英国)、アルメロ(オランダ)、グロナウ(ドイツ)
④ ロシアの国営企業ロスアトム(ROSATOM)
ユーセックとユーロディフ(アレバ)は現在ガス拡散方式で生産していますが、遠心分離法のプラントに切り替え中です。
遠心分離法は、ガス拡散法式よりも電力の消費量が約1/50で済みます。従って、大きな発電プラントと併設する必要がなく、コスト的にも優れています。米国は、ガス拡散法から遠心分離法へ技術転換中であり、濃縮ウラン事業は、パデューカ工場だけで操業していて、2010年度に遠心分離法による新工場での生産を開始する予定だそうです。
ロシアは、旧ソビエト時代の軍事用の高濃度の濃縮ウランを、商業用低濃縮ウランに変換していて、米国も旧ソビエト時代の高濃度濃縮ウランを核拡散条約にもとづいて引き受けています。
日本は、日本原燃料(株)が、青森県の六ヶ所村に遠心分離法による濃縮ウランのプラントを持っていますが、ほとんど稼動できずに現在休止中です。しかし、名目的には、濃縮ウランのカルテルに入っていて生産割当ても他の国の1割ほどですがもらっています。
商業用濃縮ウラン事業は、表向きには、核拡散防止条約を基準に、国際原子力機関 (IAEA) を通して管理していますが、実際には、供給や価格を、上記の民間会社を中心に、カルテルを組んで独占しています。