●日本は、天然ウランの産出国にあるウラン粗製棟工場から、ウラン精鉱(イエローケーキ)を輸入している。
●日本国内には、ウラン精鉱(イエローケーキ)を六フッ化ウラン (UF6) に精錬する工場は無いので、日本の電力各社は海外の転換工場から六フッ化ウランを輸入している。
●日本の原子炉は軽水炉なので、六フッ化ウランを濃縮する必要があるので、濃縮ウランの設備のあるアメリカなどから低濃縮ウランを輸入している。
日本では、天然ウラン=六フッ化ウランとして原子燃料供給を説明していますが、六フッ化ウランに転換され、さらにウラン235の濃度をあげた低濃縮ウランがある。この一連の関係を、天然ウランと六フッ化ウランで原子燃料供給を説明してしまうと、原子燃料供給の流れは説明できません。
今年の4月、伊藤忠商事と東芝は、相次いで、ウラン精鉱の調達計画を発表しました。伊藤忠商事は、伊藤忠はウズベキスタンの国営ナボイ鉱山製錬コンビナートから、年数百トンを超えるウラン精鉱を購入し日本の電力会社向けに供給するとし、2009年に、ウラン精鉱から六フッ化ウランに転換する事業会社のWestinghouse(NDA/BNFL)をグループ企業に入れた東芝は、ウラン鉱石の産出を手がけるカナダのGoviEx社とウラン精鉱引取に関する契約をしました。
伊藤忠商事は、六フッ化ウランに転換工場のない日本に、堂々とウラン精鉱を輸入するとしていますし、東芝も、濃縮ウラン製造プラントのない日本に、六フッ化ウランの安定供給を睨んだ契約であるのは明白です。
日本国内では、原子力発電所が止まっていて再稼動が問題となっている時に、伊藤忠商事と東芝の原子燃料供給の安定化求める企業行動は何を意味するのでしょうか。
今年の2月24日、核開発問題で米国の不当な圧力を掛けられているイラン政府は、日本メディアだけに、六フッ化ウランの転換施設を公開しました。日本のメディアは、イラン政府は、日本を通して、核開発の透明性を訴え、理解を得る狙いがある評論していますが、私はそうは思いません。
イランは、六フッ化ウランの転換施設を日本に見せることで、日本の電力会社に、このような転換施設があるということを鎌を掛けているのだと思います。
一昨年に、イランの濃縮ウランは日本が提供しているのではという疑惑が流されましたが、この情報をリークしたのはイランでしょう。イランが手に入れた濃縮ウランに、日本の記号が入った製造番号が入っていて、日本が国内で濃縮ウランの製造をしていると気がついたのではないでしょうか。
そして、不可解なウラン精鉱の輸入実績に疑問をもったイランは、六フッ化ウランの転換施設を見せて、日本国内にも同じ施設があるのだろうと鎌をかけてきたと考えられます。
核不拡散の日本で、六フッ化ウランの転換施設や濃縮ウランのプラントがあり、それが米国と密接につながっているとすれば、それを世界に公表すれば、圧力をかけてくる米国に対して大きなダメージを与えられます。
日本に対するイランの鎌掛けに対する答えが、4月の鳩山前首相のイラク訪問でしょう。日本外交は、米国に対してはイランの原油輸入を、イランに対しては日本の核施設のリークを踏み絵に、揺さぶられているのが現実でしょう。
そして、伊藤忠のウラン精鉱の輸入も、東芝の六フッ化ウランの安定供給の契約も、日本の核施設の事実の公表を見越した契約ではないでしょうか。
六フッ化ウランの転換プラントのない日本が、どうしてウラン精鉱(イエローケーキ)を輸入するのでしょうか、ウラン濃縮プラントのない日本に、どうして六フッ化ウランが必要なのでしょうか。
この問題は、イラン政府が気がついたように、日本には、六フッ化ウランの転換プラントも、濃縮ウランプラントもあると考えたほうが、すべて辻褄が合います。
日本は、ウラン産出国と隣接されるウラン粗製棟工場からウラン精鉱(イエローケーキ)を輸入している。そして、転換プラントで六フッ化ウランを生産し、ガス拡散法の技術で濃縮ウランを製造し、原子力発電の燃料棒を生産する。つまり核燃料の一貫生産プラントが存在しているのであり、それが、日本の電力会社が運営する原子力発電所で行われている。だから、濃縮ウランの製造過程で生まれる劣化ウランが累積されていて、それが日本各地に貯蔵されているのでしょう。
福島第一原発の4号機は、六フッ化ウランの転換プラントと濃縮ウランプラントが入っていて、原子炉は、ガス拡散法で発生する熱をとる冷却装置として利用され、燃料プールには、燃料棒ではなく、濃縮ウランが入っている「拡散筒」ではないでしょうか。
脱原発や再稼動に反対するだけでは原発は止まりません。そうではなくて、現状把握を最初からするべきであり、問題の本質はどこになるのか再検討するべきです。
何故、六フッ化ウランの転換プラントのない日本に、ウラン精鉱(イエローケーキ)を輸入するのか、ウラン濃縮プラントのない日本に、六フッ化ウランが輸入されるのか、どうして劣化ウランが存在するのか。
そこから導かれる結論が、法的に不備はあるのかどうか、不備があれば、法改正すればいいし、国際的にも法改正で済む問題でなければ原発行政は白紙撤回となります。
電力の需給予測とか、安全性などを議論しても意味はありません。福島第一原発4号機が、六フッ化ウランの転換プラントと濃縮ウランプラントが入っていたとしたならば、いま再稼動を求めている大飯原発にも、そのような原子炉プラントがあるはずですし、再稼動が検討された玄海原発や、柏崎、伊方原発にも同じ施設はあるはずです。
IAEAを動かし査察によって、日本の原子力発電所内に、六フッ化ウランの転換と濃縮ウランプラントの存在を確かめるべきでしょう。